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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

―何もしないから、安心して眠るんだ。
 百回とまでは言わないけれど、どう少なく見積もっても三十回は同じ科白を囁いた。その挙げ句、やっとキョンシルは眠りに落ちたのだ。
 人の縁(えにし)とは不思議なものだ。トスはつくづく思わずにはいられなかった。
 ひと月後に祝言を控えた女は突如として亡くなり、今、自分はその女の残した娘と二人でいる。
 キョンシルは容貌はミヨンにうり二つだが、気性はほぼ対照的と言って良かった。料理、仕立物、何をさせても衆に抜きん出、おまけに漢陽一の美貌とすら謳われた佳人、それが彼の妻になるはずであった女だ。
 ミヨンと一緒にいると、トスは安心していられた。

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