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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 眠ってしまえば、トスがまた不埒な行いに及ぶのではと案じていたのか、キョンシルはなかなか眠らなかった。
 少女の白い頬には涙の跡がいくすじも残っている。昼間に彼自身がキョンシルに対して行った許されない行為の名残であった。
 何故、あのようなことをしたのか。あまりにも非の打ち所のなさすぎる母親の影響で、キョンシルは自信を失っていた。自分には女としての魅力などないのだと頑なに言い張るキョンシルに自信を取り戻させようとしたつもりが、気がつけば、泣いて許しを請う少女を押さえつけ、陵辱しようとしていたのだ。
 あのときの彼は完全に我というか正気を失っていた。幸運にも理性を取り戻せたから良かったようなものの、あのまま勢いでキョンシルを抱いていたらと想像しただけで、暗澹とした想いになる。

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