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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

「まっ、何を言うかと思ったら、この娘(こ)は。大人をからかうものではないよ」
 ミヨンは照れたように早口で言い、立ち上がった。
「ああ、止めた止めた。こんな若い娘が着るような晴れ着は二度と着るもんではないね」
 ミヨンの頬は紅く染まっている。
 キョンシルは、ふいに泣きたくなって、ミヨンの背後から両腕を回して抱きついた。
「お母さん、幸せになってね。トスさんなら、絶対にお母さんを幸せにしてくれる。だから、二人で今度こそ幸せになって」
 母の小さな背中に、頬を押し当てる。父の貌を知らないせいか、キョンシルは自分が両親のどちらに似ているのか、自分では判らない。昔からキョンシルをよく知っている人たちは、キョンシルを母親似だと口々に言うけれど、キョンシルは母のように小柄ではなく、むしろ女人にしては大柄な方である。

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