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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 絶望的な想いに駆られ、トスは烈しく首を振りながら、拳を床に打ちつけた。
 彼の視線が再び黒髪を飾る簪に止まった。
 俺はソンニョの娘ではなく、宋キョンシルという一人の少女として、あの娘を見ている。
 彼はその瞬間、はっきりと自覚した。 
だが、それはけして許されるべきことではなかった。
―彼女は紛れもないソンニョの、ミヨンの娘だ。
 永遠に変わらない真実であり、乗り越えられない現実でもある。
 幾ら何でも、死んだ許嫁者の実の娘をその代わりに妻に迎えるなど、聞いたことがない。トスにとっては代わりでは断じてない。ミヨンとキョンシルはただ母娘というだけで、彼には全く別々の女たちなのだ。だが、世間は、そうはゆかないだろう。 

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