側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
当時、領議政の孫であり、刑(ピヨン)曹(ジヨ)判(パン)書(ソ)(当時、崔イルチェは刑曹判書)の子息が家門や何もかもを棄ててまで酒場の女と所帯を持ったという醜聞は両班たちの間で野火のようにひろがった。
ゆえに、キョンシルがミヨンから聞いたという話と〝崔氏〟の名を聞かされた時、すぐに例のひと悶着あった家、しかも両班の中でも名門中の名門といわれる家門だと察しがついた。
昔から悪は千里を走るという。悪い噂ほど忽ちにしてひろがり、周知の事実となるのだ。その頃、都から離れた海辺の町にいたトスも、崔氏の一人息子の醜聞を耳にしたことがあるのだから、どれほど、その噂が人々の間で悪意と好奇心をもって語られたか判るというものだろう。
ゆえに、キョンシルがミヨンから聞いたという話と〝崔氏〟の名を聞かされた時、すぐに例のひと悶着あった家、しかも両班の中でも名門中の名門といわれる家門だと察しがついた。
昔から悪は千里を走るという。悪い噂ほど忽ちにしてひろがり、周知の事実となるのだ。その頃、都から離れた海辺の町にいたトスも、崔氏の一人息子の醜聞を耳にしたことがあるのだから、どれほど、その噂が人々の間で悪意と好奇心をもって語られたか判るというものだろう。