テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第5章 対面

 馬執事は主人の疑問に忠実に応えただけなのに、老人はすごぶる機嫌が悪かった。
「そのようなことは聞いてはおらぬ」
 切って棄てるように言い、舌打ちを聞かせた。
「使えぬ奴だ」
「あの、旦那さま。その男が申すには、これらの品々をお目にかければ必ずや娘を連れてきた真の意味をご理解頂けるだろうと」
 執事が手ぬぐいで汗を拭き拭き言う。
「ええい、何ゆえ、そのことを最初に申さぬのだ」
 と、また癇癪を起こしている。
「も、申し訳ございません」
 執事は蒼褪めて、平身低頭で謝った。
「その品をこちらに見せよ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ