テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第5章 対面

 執事は黄色の風呂敷包みを恭しく捧げ持ち、老人に差し出した。
 老人は気のなさそうな様子で包みを解き、中身を検めた。やがて、そのしかめっ面が大きく変化した。真剣そのものといった表情で翡翠の首飾りや書き付けを代わる代わる眺めている。
 針で突けば音を立てて破れそうなほどの緊張を孕んだ空気が老人を包んでいるようだ。
「娘、この品をどこで手に入れたのだ?」
 居丈高な態度は相変わらずである。キョンシルは苛立ちと怒りを憶えながらも、努めて平静を装った。
「亡くなった母から直接、手渡されました。母は私が崔氏の血を引くことをずっと黙っているつもりだったらしいのですが、息を引き取る間際に気が変わったと申しておりました」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ