側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第5章 対面
「よもや、盗んだということはあるまいな?」
キョンシルは思わず両脇に垂らした拳を握りしめた。彼女の胸中も知らず、老人は滔々と続けている。
「もし、そなたの話が偽りでないとすれば、何故、母親は黙っているつもりであった話を死の間際になって話したのか。死ぬ前に急に欲が出て、己れの娘を両班家に送り込みたくなったのかもしれぬ」
ついにキョンシルの怒りが爆発した。
「良い加減にして!」
立ち上がると、老人を高みから見下ろして、ひと息に言った。
「私はこの首飾りと書き付けを盗んでなんかいないわ。それに、お母さんのことを悪く言わないで。あなたには気に入らない嫁だったかもしれないけれど、私にとっては朝鮮一のお母さんよ。
キョンシルは思わず両脇に垂らした拳を握りしめた。彼女の胸中も知らず、老人は滔々と続けている。
「もし、そなたの話が偽りでないとすれば、何故、母親は黙っているつもりであった話を死の間際になって話したのか。死ぬ前に急に欲が出て、己れの娘を両班家に送り込みたくなったのかもしれぬ」
ついにキョンシルの怒りが爆発した。
「良い加減にして!」
立ち上がると、老人を高みから見下ろして、ひと息に言った。
「私はこの首飾りと書き付けを盗んでなんかいないわ。それに、お母さんのことを悪く言わないで。あなたには気に入らない嫁だったかもしれないけれど、私にとっては朝鮮一のお母さんよ。