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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第5章 対面

「済みません、執事さん。私が少し言い過ぎたみたいで、この人、相当頭に来てるみたいなので、倒れないように気をつけてあげて下さい」
 キョンシルは馬執事にぺこりと頭を下げ、悠々と室を出ていった。一方の馬執事はいかにもキョンシルを見送るといった体で頭を下げているが、実は笑いをかみ殺していた。
 いつも使用人たちを叱責ばかりしているこの老主人があんぐりと口を開けて固まっているのを見るのは気分が良い。
 両開きの扉が音を立てて閉まった後、老人はやっと口がきけるようになった。
「馬鹿な。あのような下賤な小娘がチソンの血を引く娘であるはずがない」
 老人は信じられないといった面持ちで天を仰いだ。

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