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　彼は息子を愛し、誇りにしていた。この息子であれば、次の当主の座と建国以来、連綿と続いてきた家門を安心して譲り渡せると思っていたのである。
　だが、あの性悪女がすべてを台無しにし、息子の輝かしい運命を狂わせた。息子が数人の友人と連れ立って、あの女のいる酒場に行ったのが運の尽きとなった―。
　やがて邪な女の色香の虜となった息子は、家門も将来の栄達も何もかも棄て、女の許に走った。両親の反対にも一切、耳を貸さなかった。幼いときから一度として親の言いつけに背いたことのない子が親に真っ向から逆らい、屋敷を出ていったのだ。しかも、代々の崔氏の女たちに受け継がれてきた家宝ともいうべき首飾りを持ち出してまで。