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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第5章 対面

 風の便りに、その後、女が息子の子を懐妊し、赤児を生んだと聞いたが、彼には何の感慨もなく、ただ息子は二度と戻らぬつもりだと思い知らされただけであった。そして、赤児が生まれて半年後、彼の愛して止まなかった息子は流行病が因で亡くなった。当時、二十六歳になったばかりのことだ。
 彼の妻は息子が屋敷を出てから泣き暮らし、息子の死を知って後は、その憂愁は更に深くなった。妻が息子の後を追うように亡くなったのは、その一年後。
 宋ミヨンという女は、崔家にとっては疫病神に等しい。彼と妻から最愛の息子を奪い、息子の将来を滅茶苦茶にして生命まで取り上げた。元々、身体が丈夫でなかった息子が過労で身体を壊したのは明らかであった。

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