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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第5章 対面

「大丈夫ですか?」
 家僕は巨体には似合わず、身軽らしい。すぐにキョンシルに追いついた。
―行ってしまった。
 キョンシルは一人取り残された悔しさと淋しさに堪え切れず、泣いた。
「約束したのに、ここを出たら、トスおじさんの故郷に連れていってくれるって約束したじゃない」
 地面に打ち伏してすすり泣くキョンシルの傍らに、家僕が膝をついた。
「だから、言ったでしょう。走ったら、転ぶって」
 キョンシルは家僕の出した手に掴まり、立ち上がった。

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