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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第5章 対面

「相変わらず、走るのも遅いし、泣き虫なんですね」
 家僕のその言い方に、キョンシルはハッと顔を上げた。
―や~い。のろま。キョンシルはいつも走るのが遅いな、今日もお前がべっとこだ。
 いつも何故かキョンシルばかりを眼の仇にして苛めていたガキ大将、ジュボク。今、彼女の眼前にいるのは、あのジュボクだった。
「もしかして、ジュボクなの?」
「もしかしなくてもジュボクだよ」
 家僕―いや、ジュボクは、あの頃と殆ど変わらない丸顔でニッと笑った。
「あなた、ソボクおじさんの後を継いで八百屋をやってるんじゃ」
 ジュボクは笑って首を振った。

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