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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第5章 対面

「とりあえず、お屋敷に戻るよな」
 念を押され、キョンシルは押し黙った。
「―行くところがないんだろ?」
「でも、あんなところはいや」
「そう言うなよ。幾ら嫌ってても、お前の祖父さんなんだろうが」
 ジュボクは昔と本当に変わらなかった。言いたいことは容赦なくずけずけと言う。ただ一つだけ大きく変わったところは、キョンシルにとても優しくなったことだ。
「キョンシル、あの爺さん、普段は俺たちにえばってても、本当は淋しいんだよ。俺ァ、お屋敷にお仕えするようになってもう五年になる。ここのお屋敷の若さまが惚れた女と一緒になるために、屋敷をおん出ちまったことも朋輩たちから聞いたし、爺さん―旦那さまがどれだけ心淋しく暮らしてきたかも聞いた。旦那さまも若さまがいなさった頃は、ここまで頑固じゃなかったし、使用人にも結構優しかったってさ。

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