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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第5章 対面

お前がこのお屋敷のお嬢さまだったのには、正直愕いちまったが、折角、旦那さまに逢いにきたのなら、しばらくお屋敷で暮らして様子を見てみたらどうだ?」
 彼の言葉はもっともだといえた。どの道、キョンシルには当面、行く当てがないのだ。仕立物をするといっても、住む場所もないのに、すぐにすぐ始められるとは思えない。
「なっ、そうしてみろよ。悪いことは言わないからさ」
「そうね」
 キョンシルは頷いた。何も身内の家だと思う必要はない。どこか片隅に置いて貰って、住むところと働き口が見つかるまで女中の代わりでもしていれば良いのだ。もっとも、その願いが聞き入れられるならばの話だが。

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