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　女中たちはまた顔を見合わせ、逃げるようにその場から立ち去ってゆく。去り際、クスクスと失笑が聞こえてきた。
「幾らお嬢さま扱いしなくて良いと言われても、あの人に仕事なんかさせられやしない」
「そうよ、うっかり睨まれて、後であの娘(こ)が正式にお屋敷に迎えられることにでもなったら、大変。それこそ、どんな仕返しを受けるか知れやしない」
「いつまでここにいる気かしら。気詰まりったら、ありゃしないわ。旦那さまの孫と一緒に働くなんて」
「でも、本当にあの貧相な娘がこのお屋敷のお嬢さまなの？　どう見ても、私たちと変わらないように見えるけど」
「もしかしたら偽物かも」
「それもあり得るわね」
　その後で弾けるように笑い声が響き、やがて声は完全に聞こえなくなった。