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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 キョンシルが母よりも唯一優れている―それは言い過ぎにしても、張り合えるくらいのものがあるとすれば、それはお針子としての技術だ。自分で言うのは何だが、家を出ても、キョンシルは一人で十分に稼げる目算はあった。今はまだ時折、母の手伝いをするだけにすぎないが、母の具合が良くない時、何度か代わって途中から仕立物を仕上げたことがある。
 ミヨンは時々、原因不明の症状で寝込むことがあった。左胸の辺りがしくしくと痛むのだという。大抵の場合、薬を飲んで数日安静にしていれば治るので、ミヨン当人は深刻に考えてはいないようだ。
 その薬は多少高価ではあったが、確かにミヨンには良く効くようであった。ミヨンが薬屋から買ってくるので、キョンシルはそれが何の薬かは知らない。

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