テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

 だから、キョンシルの唯一の肉親だという祖父の許に連れてきて、置き去りにしたのだ。
 重荷になって棄てるくらいなら、最初から希望を抱かせないで欲しかった。トスが一緒に行こうと言ってくれて、キョンシルは見てはいけない夢を見てしまったのだ。義理の父と娘という関係でも構わないから、このままずっとトスの側にいられると物凄く歓んだのに。
 それとも、わざわざ引き返してこの屋敷まで連れてきてくれたことに感謝するべきなのだろうか。トスが心根の曲がった男なら、途中でキョンシルを奴隷商人か妓房に売り飛ばしていたかもしれないのだ。
―幸せになんて、なれるはずがないじゃないの。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ