
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第6章 崔家での日々
イルチェは不承不承といった様子で、キョンシルの手を借りて布団に戻った。その時、キョンシルは漸く思い出した。若い女中たちの話にしょっちゅう〝旦那さまの腰痛〟が出てくるのだ。普段の生活には支障はないが、一度痛み出すと、一人では身動きできないほどになるのだという。
「お薬が零れてしまったので、もう一度、入れ直してきますね」
小卓を下げて出てゆこうとすると、唐突に呼び止められた。
「その必要はない。零れたといっても、ほんの少量だ」
キョンシルはイルチェの側に戻り、彼に薬湯の入った湯飲みを渡した。その間、少し離れて控えている。キョンシルの眼には、いやでもイルチェが映った。
「お薬が零れてしまったので、もう一度、入れ直してきますね」
小卓を下げて出てゆこうとすると、唐突に呼び止められた。
「その必要はない。零れたといっても、ほんの少量だ」
キョンシルはイルチェの側に戻り、彼に薬湯の入った湯飲みを渡した。その間、少し離れて控えている。キョンシルの眼には、いやでもイルチェが映った。
