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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

 湯飲みを持つイルチェの手は小刻みに震え、何度も湯飲みを取り落としそうになった。呑み終えた後、再び手を貸して布団に横になったものの、豪奢な夜具に寝ていると、人が寝ているのかどうか疑いたくなるほど布団の厚みがない。要するに、酷く痩せているのだ。
 初対面では、背の高い頑強な老人だという印象が強かったが、やはり歳は歳ということなのだろうか。
「旦那さま、よろしければ、脚をお揉みしましょうか。私、こう見えても、力だけは自慢できるほどあるんです」
 イルチェが特に異を唱えなかったので、キョンシルは掛け布団をほんの少しだけ捲り、イルチェの脚を揉んだ。丹念に揉みほぐしてゆくと、イルチェは気持ち良さげに眼を閉じている。

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