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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

 この人の口から父の話が出たことも愕きではあったけれど、嬉しくないはずがない。ただ横柄なだけの老人かと思った人が急に近しく思えてきた。
「そうか、そうであったな。生まれて六月(むつき)では、憶えおらずとも仕方ない」
「でも、お母さんが色々と話してくれました。だから、旦那さまがご存じないお父さんのことも少しはお話しできると思います」
 と、それまで機嫌の良かったイルチェが急に不機嫌になった。
「―お祖父さま?」
 窺うように言ったキョンシルに向かって、烈しい罵声が飛んだ。
「儂をお祖父さまなどと呼ぶでない。賤しい女の血が流れているお前に祖父呼ばわりされる憶えはない!」

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