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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

 自分は随分と長い間、それこそ気が遠くなるような刻をたった一人で過ごしてきた。これから先、どれほどの寿命があるかは知らないが、神が与え給うた残りの時間がさして多くないことは判っている。
 そして今、たった一人の孫、この世で唯一の肉親と呼べる者が現れたのだ。自分に許された残り少ない時間を、愛しい者と過ごすことを何故、躊躇わなければならないのだろう? 
 手を伸ばせばすぐ届く場所に、孫娘がいるというのに、どうして、自分は頑なに背を向ける? ああ、チソン。やっと帰ってきてくれたんだな。儂には判る。お前は間違いなく、お前の娘キョンシルの中で生きている。

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