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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

 口々に言い合う人々の中から進み出たのは、恰幅の良い四十年配の男だった。傍らに綺麗な笠を被った小柄な女が控えている。笠にから垂れている薄絹のせいでよく見えないが、連れの女は複雑な形に髪を結い上げ、煌めく玉を幾つも飾っている。いささか派手すぎるチマチョゴリを纏ったその姿は妓生と呼ばれる職業の女、つまり遊び女である。
 妓生は表向きは遊芸―舞や歌、伽耶琴(カヤグム)を客の前で演奏して報酬を得るとされていたが、内実は客と同衾する遊女であった。
 四十ほどの男は女に負けないくらい煌びやかなパジを着ており、どう見ても、裕福な商人といったところか。対する女は陽の光の下でよく見ると、美しく装ってはいるものの、既に五十は近い大年増である。

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