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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

「女将、あの娘を―」
 商人が娘を指さし、いかにも好色そうな分厚い唇を舐めた。まるで獲物を前に舌なめずりしている犬のようだ。
 二人はこそこそと何やら話している。会話の端々に〝気に入った〟とか〝場所を貸してくれ〟などと、何やら物騒な相談をしていることが窺える。
 やがて、行き倒れた娘はその商人に抱き上げられ、いずこかへと運び去られた。

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