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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第7章 未来を照らす一番星

 イルチェは鷹揚に言い、トスを値踏みするように見つめた。再びトスの面に緊張の色が滲む。
「良い眼をした若者だ」
 そして、再びキョンシルを見た。
「キョンシル、幸せになりなさい」
 たったひと言だけ残し、踵を返す。トスが慌てて腕を持って支え、イルチェはゆっくりと杖を使いながら輿へと戻っていった。
 流石は、かつて〝朝廷に崔イルチェあり〟と謳われたほどの大物、引き際も鮮やかなものだった。
 輿の戸が閉まり、動き出す。トスとキョンシルは並んで頭を下げ、イルチェを見送った。
 輿が大通りを進み、四つ辻を曲がって見えなくなったところで、トスが大きな息をついた。

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