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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第7章 未来を照らす一番星

 でも、これは、けして怒っているわけではない。この男は照れると、わざと不機嫌になったみたいにふるまうのだ。その彼の癖をキョンシルはつい最近、知ったばかりである。
 二人ともまだまだお互いについて知らないことは多いけれど、それはこれからゆっくりと知っていけば良い。何しろ時間はたっぷりとあるのだ。
 愕いたことに、母の話を持ち出しても、もうトスの顔には以前のような動揺は見られなかった。半月前、崔家の前で別れるときまでは、〝ソンニョ〟の名前を聞いただけで、彼の端正な面に翳りが差していた。
 むろん、それは漣ほどの、注意深く見ていなければ気づかない程度のものすぎなかった。が、今のトスは別段、心を波立てているようにも見えない。トスの心の中でも何かか少しずつ変化していっているのだろうか。

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