側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から
「本当にしようのない奴だな」
トスの端正な面にわずかに苦笑めいた笑みが滲む。
「ねえ、トス。海の水が塩辛いって、本当だったのね」
弾んだ声に現(うつつ)に返れば、キョンシルは今度は海水を両手で掬って呑んでいる。
トスは呆れた表情で、わざとらしい渋面をこしらえた。
「良い加減にしないか。年端のゆかぬ子どもでもあるまいに」
「お生憎さま、どうせ、トスおじさんにとって私は、子ども程度のものでしょ」
と、いきなりトスの貌めがけて海水の礫(つぶて)がぶつかり、彼は声を荒げた。
「キョンシル!」
弾けたように聞こえるキョンシルの笑い声が静かな空間に響き渡る。
トスの端正な面にわずかに苦笑めいた笑みが滲む。
「ねえ、トス。海の水が塩辛いって、本当だったのね」
弾んだ声に現(うつつ)に返れば、キョンシルは今度は海水を両手で掬って呑んでいる。
トスは呆れた表情で、わざとらしい渋面をこしらえた。
「良い加減にしないか。年端のゆかぬ子どもでもあるまいに」
「お生憎さま、どうせ、トスおじさんにとって私は、子ども程度のものでしょ」
と、いきなりトスの貌めがけて海水の礫(つぶて)がぶつかり、彼は声を荒げた。
「キョンシル!」
弾けたように聞こえるキョンシルの笑い声が静かな空間に響き渡る。