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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

 キョンシルは海から砂浜へと戻ってきて、上衣の袖から手巾を取り出した。すっかり砂まみれになってしまった素足を丁寧に拭く。
 顔を上げた時、またトスの強い瞳とぶつかった。
 今度は、トスの方が先にハッとたじろいだ。
「あ、いや―、済まない」
 何故、ここでトスが突如として謝るのか理由も判らないままに、キョンシルは微笑む。まさか、トスが自分の剥き出しの脹ら脛を眩しげに見つめていたことなど、知る由もないキョンシルである。
「また、ゆっくりと来れば良いわよね。おじさんの知り合いがいるっていうお寺は、ここから近いんでしょ」
「ああ」
 トスも笑顔で返し、二人は並んで歩き始めた。

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