
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から
いかほどの刻が流れたのか。ハッと我に返ると、既に読経は終わっていた。トスは立ち上がり、近づいてくる僧侶に深々と頭を下げた。
「慈心和尚、お久しぶりです」
「おう、そなたは―」
慈心と呼ばれた僧は四角張ったいかつい顔をほころばせた。やはり第一印象は間違いではなかったようだ。全体的に屈強な体躯をした僧は、僧侶というよりは森で獲物を狩る猟師のいでたちが似合いそうな気もする。
しかし、その細められた柔和な目許は、対する者に絶対的な安心感を与えてくれるようで、やはり、この野性的な風貌の男が僧侶なのだと教えてくれた。
「慈心和尚、お久しぶりです」
「おう、そなたは―」
慈心と呼ばれた僧は四角張ったいかつい顔をほころばせた。やはり第一印象は間違いではなかったようだ。全体的に屈強な体躯をした僧は、僧侶というよりは森で獲物を狩る猟師のいでたちが似合いそうな気もする。
しかし、その細められた柔和な目許は、対する者に絶対的な安心感を与えてくれるようで、やはり、この野性的な風貌の男が僧侶なのだと教えてくれた。
