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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

 薪割りや掃除といった雑用仕事を若い僧たちに混じってやっているようだ。それを見たキョンシルは、むろん、自分も手伝いたいと頼んだのだけれど、生憎、寺には女っ気がない。もちろん、トスはぶっきらぼうにひと言、〝駄目だ〟と言ったきりだ。
 僧侶は女人禁制ではあるけれど、すべての寺に女がいないというわけではない。仏道修行と下働きを兼ねて、女人を一人か二人は置いている寺もある。しかし、この寺には女っ気はなかったから、トスの保護本能と所有欲がまたぞろ出たというわけだった。
 本音をいえば、彼はキョンシルをまだ若い僧たちに近づけたくないのだ。
 しかし、キョンシルにはトスの本心までは判らない。

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