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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

 それだけで、自分の心に巣喰っている邪なもの―母の恋人を愛してしまったことへの引け目―がすべて洗い流されていくような気がする。
 更に深呼吸しようとしたその時、背後からいきなり声をかけられた。
「キョンシル」
 飛び上がらんばかりの勢いで振り向くと、背後に慈心和尚が佇んでいる。
「和尚さま」
 キョンシルは見知った顔に安堵の表情を浮かべ、軽く頭を下げた。
「どうかな」
 たったそれだけの問いかけではあったけれど、キョンシルは和尚が何を言いたいのか瞬時に理解した。

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