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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から

「そうですか、それは良かった。やはり、この町は都と違って、小さな田舎町ですからな。ましてや、ここは世俗とは隔たった寺だ。お嬢さんが退屈しているのではないかと心配していたんですよ」
 和尚の表情は心底からキョンシルを気遣ってくれていることを物語っている。
「お心遣い頂き、ありがとうございます。ところで、和尚さま、一つだけお訊きしたいことがあるのですが」
「何でしょう」
 和尚は細い眼を更に細めた。
「トスおじさんと和尚さまは昔からの知り合いなんですよね?」
「ええ、まあ、そういうことになりますな」
 和尚は曖昧な口調で頷き、視線を逸らした。

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