
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第8章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 海の町から
まっ、いずれ話すべきときが来れば、トスの方からお嬢さんに話すと思いますよ」
急に輝きを失った蒼海に気づき、頭上を見上げてみれば、鉛色の雲が俄に空を覆い尽くそうとしている。和尚は興味を失ったように、眼前の海から視線をキョンシルに戻した。
「あやつの父とあやつは、そっくりですよ。儂はご覧のとおり、若い頃から女には見向きされるどころか、逆に怖がられる面相でしたが、あやつの父はなかなかの優男でした。言い寄る女人には引きもきらず、儂から見れば羨ましいのひと言に尽きましたがなあ。さりながら、慶(ギヨン)元(ウォン)にはまるで興味なし、いつも難しげな書物に食らいついておりました。全く、儂などの俗物よりも学者肌のギョンウォンの方がよほど坊主にふさわしかったと思いますが、人間の宿命なぞどこでどう転ぶか判らぬもの、今は儂の方がこんな生臭坊主になっておりますでのぅ」
急に輝きを失った蒼海に気づき、頭上を見上げてみれば、鉛色の雲が俄に空を覆い尽くそうとしている。和尚は興味を失ったように、眼前の海から視線をキョンシルに戻した。
「あやつの父とあやつは、そっくりですよ。儂はご覧のとおり、若い頃から女には見向きされるどころか、逆に怖がられる面相でしたが、あやつの父はなかなかの優男でした。言い寄る女人には引きもきらず、儂から見れば羨ましいのひと言に尽きましたがなあ。さりながら、慶(ギヨン)元(ウォン)にはまるで興味なし、いつも難しげな書物に食らいついておりました。全く、儂などの俗物よりも学者肌のギョンウォンの方がよほど坊主にふさわしかったと思いますが、人間の宿命なぞどこでどう転ぶか判らぬもの、今は儂の方がこんな生臭坊主になっておりますでのぅ」
