テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

 キョンシルも十五歳の娘である。食い気も色気も自分では人並みだと思っているが、やはり、時刻もそろそろ昼時ともなれば、前者の方に天秤が傾くのも致し方ない。
 前方から何とも食欲をそそる匂いが流れてきて、キョンシルが思わずふらっとその方向へと誘われようとした時。
 真横から誰のものとも知れぬ歓声と嬌声が上がった。見れば、小さな露店の前に山のような人だかりができている。よくよく見渡せば、客は皆女ばかり。歳も若い娘が圧倒的に多い。
 小柄なら到底見られないだろうが、こういう時、女にしては大柄なキョンシルは得だ。少し伸び上がるだけで、遠くまで見渡せる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ