テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

 どうやら娘たちが取り巻いているのは小間物屋のようである。店主はまだ若く、恐らく二十代前半。その男がうつむけていた顔を上げた時、キョンシルはこの店の客が女ばかりなのに納得がいった。
 店主の男は並外れた美貌だったのだ。朝鮮人にしては彫りの深い整った美貌は、漢陽ですら滅多にお目にかからないほどの代物だ。
 陽の光を糸にして紡いだかのような茶褐色の髪は陽光に当たり、金茶色にも見え、凄艶とも形容できる美貌でありながら、精悍さを失っていない。要するに、同じ美男でもトスのようにいかにも朝鮮人らしい顔立ちの男とは対極にある類の美しさである。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ