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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 キョンシルが我が事のように誇らしげに言う。
 ウッオッホン。トスは盛大な咳払いをし、紅くなった貌で言った。
「キョンシル、大人をからかうのは良い加減にしなさい」
「あら、だって本当のことじゃない。トスさんってば、紅くなってるくせに」
 キョンシルが笑うと、傍らのミヨンも窘める口調で言い添えた。
「キョンシル、トスに失礼よ」
「い、いや。ソンニョ、その―、何と言ったら良いか」
 元々、寡黙な男はますます言葉に窮しているようだ。トスは惚(ほう)けたようにミヨンを見つめている己れに気づき、恥じ入るようにうつむく。所在なげに視線をさまよわせた挙げ句、あらぬ方を向いたまま、ぶっきらぼうに言った。

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