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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

 ただし、美男というものは往々にして身なりには構わないものか、この男も良い歳をしていながら、長い髪を結いもせず背中に垂らして無造作に括っているだけだ。着ているものも質素なパジで、身なりだけ見れば何ということはないその日暮らしの商人だろう。
 しかし、その質素な服の下に隠された体躯はトスと同様、武芸で鍛錬されたしなやかなものであることは傍目にも判った。
―この人、異様人なのかしら。
 どう見ても周囲から浮いているその美しい店主を見つめていると、ふいに、店主と視線が合った。向こうが思わせぶりに片目を瞑って見せるのに、キョンシルは真っ赤になった。
 な、なに、あの男。

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