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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

 何さま、あの稀有なほどの美男ぶりだから、世の女はすべて自分に気があると思い込んでいたとしても、無理はない。もっとも、キョンシルも男のきれいな顔にほんの一瞬でも見とれていたのに間違いはないが。
 そのときだった。背後から女の悲鳴が上がった。また今日は何とも賑やかな日であることか。この町に来て初めての外出は愉しむどころか、前途多難らしい。キョンシルは内心、嘆息しながら振り返る。
 と、道端にうずくまる男と彼に取り縋っておろおろと慌てるお付きらしい二人連れが眼に入った。どうも主人が急に人混みで倒れ、側を通り掛かった女が驚愕して悲鳴を放ったらしい。

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