テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

「―」
 咄嗟の指摘に、キョンシルは言葉を失った。確かに朝鮮人離れした異様人めいた美貌に目を奪われはした。しかし、別にそこまでだ。一時の興味を引かれたものの、キョンシルには心に秘めた想い人がいるのだ。どうして他の男に心奪われたりしよう?
 それにしても、何と不躾な男なのだろう。他人の心に勝手に踏み込んできて、好き放題に当て推量にすぎないことをまくしたてるなんて。どれほどのお金持ちのぼんぼんかは知らないけれど、キョンシルの最も嫌いな男の部類に入る奴だ。
 あの女どもに囲まれて鼻の下を伸ばしている女たらし―小間物屋よりも更に始末が悪い。キョンシルが黙っているのをどう勘違いしたものか、若者はどこか得意げな面持ちで滔々と語る。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ