テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 と、ミヨンが突如として右手で左胸を押さえた。
「あっ―」
 短い呻き声を上げ、ミヨンの身体がくの字に曲がった。
「お母さん?」
「ソンニョっ!?」
 キョンシルもトスもどちらもがほぼ同時に叫んだ。
 それは、さながら一輪の花が心ない風に弄ばれ、散ってゆくようにも見えた。
「お母さんッ、お母さん、しっかりして」
 キョンシルは駆け寄ると、狂ったように叫び母の身体を揺すった。
「キョンシル、こんなときだ。ソンニョの身体をあまり揺すってはいけない。俺はとにかく医者を呼んでくるゆえ、そなたは気を確かに持って側についていてくれ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ