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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

   恋の病 

 頭が重い。頭部に鈍い痛みを感じ、李ウォンジュンは小さく呻いた。いや、本当は頭が痛いのではない、心が、痛むのだ。
 何故、この自分では駄目なのだろうか。自分で言うのも何だが、見栄えもそう悪くはないし、何より自分は李家の息子なのだ。ウォンジュンの恋人、いや妻になりたがる娘はこの町には掃いて捨てるほどもいる。その自分に望まれたというのに、あの娘―キョンシルは少しも嬉しそうではなく、むしろ心外だと言いたげであった。
 ただ大人しくウォンジュンの腕に飛び込めば、彼はあの娘にこの世のありとあらゆる栄華を与えてやれる。都の両班に勝るとも劣らない豪勢な暮らしをさせてやるのに。

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