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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 多分、もっと前から、母は具合が悪かったのだろう。そういえば、少し早めの夕餉も殆ど手を付けず、残したのだ。キョンシルは、これから更に美しく変身した母を見たときのトスの愕きぶりを母が想像して、胸が一杯なのかと勝手に良いように勘違いしていたのだが―。
 身体の調子が良くなかったから、食べられなかったのではないのだろうか?
―私ったら、何てことを。
 あまりの迂闊さに、自分が腹立たしかった。
 母はトスが来るから、明らかに無理をして元気そうにふるまっていたのだ。
「お母さん、しっかりして。これからやっと幸せになれるっていうときに、倒れたりなんかしてる場合じゃないでしょう」
 キョンシルは唇を噛みしめて、横たわる母を見つめた。

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