側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病
トスは額から流れ落ちる汗を無造作に拳で拭った。いや、顔だけでなく、身体中、既に汗まみれである。六月も半ばを過ぎ、既に下旬にさしかかるこの季節、この地方は既に炎暑に見舞われていた。
殊に力仕事をすれば、それこそ頭から滝壺に墜落したかのように全身が汗びっしょりだ。まだ薪割りを始めて四半刻ほどにしかならないというのに、着ている上衣もズボンも絞り忘れた洗濯物のように濡れている。
トスが新たに斧を振り上げた時、控えめに声がかかった。
「トスさん、お客さんですよ」
顔を上げると、この寺では最年少の僧侶が立っている。
殊に力仕事をすれば、それこそ頭から滝壺に墜落したかのように全身が汗びっしょりだ。まだ薪割りを始めて四半刻ほどにしかならないというのに、着ている上衣もズボンも絞り忘れた洗濯物のように濡れている。
トスが新たに斧を振り上げた時、控えめに声がかかった。
「トスさん、お客さんですよ」
顔を上げると、この寺では最年少の僧侶が立っている。