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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

 それが、トスのソンジュンに対する印象であった。何より、引き際を心得ている。
 トスはソンジュンに対して、おおよその事情は隠さず伝えた。ただ、我が身の義理の娘への恋情とキョンシルが名門両班の崔氏の息女だという話だけは除いて。キョンシルが亡くなった許嫁の娘であり、その身寄りのない娘を引き取ったこと。キョンシルの母がトスと祝言を目前にして亡くなったことまで話したのだ。
 ソンジュンほどの大物を相手にする際、下手に嘘八百を並べるよりは、どうしても明かせぬ部分だけは伏せ、大方は真実を伝える方がよほど利口というものだろう。変なごまかしは、かえって話をややこしくする。
―それで、あなたは、その義理の娘を連れて、旅に出たというわけですか。年頃の娘とまだ若い男が二人だけで旅に出るということが何を示すかを承知の上で?

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