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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

 恐らく、ソンジュンはトスの話から、すべてを見抜いたに相違ない。トスがキョンシルを既に娘としてではなく、一人の女として見ていることも。しかし、彼はキョンシルとトスの上辺だけの関係以上のことには少しも言及することなく、あっさりと帰っていった。腹立ち紛れに、二人の関係を貶めるような発言も一切しなかった。その点は、流石に度量の大きいというか、肝の据わった男だとトスもソンジュンの悪印象を改めないわけにはゆかなかった。
 それにしても、ソンジュンの来訪がキョンシルの留守で良かったとつくづく思わずにはいられない。今日、キョンシルは町に出かけていた。前回の外出は半月近く前、それこそ李ウォンジュンと出逢ったときだから、今頃は久しぶりに町の賑わいに触れて心時めかせていることだろう。

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