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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

 何と言っても、まだ十五歳の娘なのだ。いじらしいくらいに何も言わないけれど、綺麗な服も着たいだろうし、華やかな装身具だって身につけてみたいだろう。毎日、寺に閉じこもって繕い物ばかりしていては、鬱憤もたまるのではと、トスは快く送り出してやった。もっとも、例の李家の坊ちゃんには気をつけろよとくどいほど念を押してやったが。
 なのに、キョンシルの留守中に坊ちゃんの父親の方がやってくるとは、皮肉なものだ。
 トスが想いに沈んでいると、またしても室の扉の向こうで来客を告げる声が聞こえた。
 やはり、あの幼い僧が案内してきたようだ。
 トスは半身を起こし、やや面倒くさげに言った。

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