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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 到底、倒れている人とは思えないほどの凄い力だった。
「キョンシル、お前に渡しておかなければならないものがある、の」
 呼吸が苦しいのか、ミヨンは荒い息を吐きながら呟くように言った。
「今は安静にしていなければ駄目よ、お母さん。話なら、良くなってから幾らでも聞けるわ」
 キョンシルが首を振ると、ミヨンは懸命な面持ちで首を振った。
「駄―目。私にもしものことがあれば、お前に真実を伝えられる者はいなくなっちまう。だから、今、これを」
 ミヨンは震える手を自らの懐に入れた。何かを取り出そうとしているらしい。

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