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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

 キョンシルは両手に後生大切そうに包みを抱え、ゆっくりと境内を歩いた。手に持っているのは、蒸かしたての饅頭である。まだ包んで貰ったときには、湯気が立っていた。
 もちろん、自分とトスだけでなく、慈心和尚や他の僧たちの分も買ってきている。あの小さな小僧さんには、自分の分をあげても良い。何しろ食べ盛りだろうからと、自分もまだ成長期まっただ中、トスが愕くほどご飯を食べるキョンシルは大真面目に考えている。
 広い境内を急ぎ足で歩いていると、ちょうど、向こうでその少年僧が掃き掃除をしているのに遭遇した。
「お帰りなさい。町はどうでしたか?」
 と、一人前の口をきく彼に、キョンシルは笑った。

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