側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病
方も間違いなく一つの愛情の示し方だ。父上の店はこの町いちばんと謳われている。それほどの規模を誇る絹店の店主という地位に誰もが容易くなれると思うほど、君も子どもではなかろう」
世間知らずの子どもを宥めるような口調である。ウォンジュンは唇を噛みしめた。
「判っています。商売の才覚もない私が易々と絹店の店主になれるのは、〝父の息子〟だという立場があるからだと」
トスの面に再び笑みが戻った。
「そこまで心得ているのなら、素直に父上の意を汲むことだ。人間、誰しも綺麗事だけでは生きてゆけない。ましてや、漢陽の豪商にも劣らぬほどの大きな店を維持してゆくのは並大抵ではなかっただろう。時には非情にもならねばならなかったはずだ。
世間知らずの子どもを宥めるような口調である。ウォンジュンは唇を噛みしめた。
「判っています。商売の才覚もない私が易々と絹店の店主になれるのは、〝父の息子〟だという立場があるからだと」
トスの面に再び笑みが戻った。
「そこまで心得ているのなら、素直に父上の意を汲むことだ。人間、誰しも綺麗事だけでは生きてゆけない。ましてや、漢陽の豪商にも劣らぬほどの大きな店を維持してゆくのは並大抵ではなかっただろう。時には非情にもならねばならなかったはずだ。