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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第10章 第二話 【はまなすの咲く町から】 恋の病

「それでも、君が何と言おうが、父上のやり父上は父上なりのやり方で君を愛し、大切に守り抜いてきた絹店の店主という地位を君に譲ろうとしているんだ。良い加減に大人になって、父上の苦衷を察してあげては」
 この若者は偉大な父親に強い反発を憶えながらも、それと同等分の憧れと尊敬をも抱いている。相反する複雑な感情の間で揺れ動き、自分の心のありかを本人ですら見失っているのだ。李ソンジュというあまりにも大きすぎる父親を持ったがために、数多くの恩恵を蒙りながらも、また太陽の陰に隠れた月のごとく自ら輝くことを長らく忘れていた。
 恐らく、この若者は父親に勝るとも劣らぬほどの器を持っているはず。本堂でキョンシルに襲いかかっているのを見たときの印象は最悪、殺意すら憶えたほどだ。

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